健康経営ラボ_コラムvol.12 「中高年のひきこもり」は他人事ではない。社員と家族を守る健康経営の視点

「うちの会社には関係ない」と思われるかもしれませんが、中高年のひきこもりは、従業員本人やその家族を通じて、どの企業にも起こりうる人材リスクです。

内閣府の推計では40〜64歳のひきこもり状態にある人は61万人を超えており、若年層を上回る規模です。

本記事では、中高年のひきこもりの実態と、健康経営の視点でできる対策を整理します。

中高年のひきこもりはどれくらい増えているのか

内閣府が2019年に公表した初の中高年層調査では、40〜64歳でひきこもり状態にある人は推計61.3万人、うち男性が76.6%を占めました。きっかけとして最も多かったのは「退職」で29.1%、次いで人間関係の問題や病気、職場になじめなかったことなどが挙げられています。

その後、2022年度に実施された内閣府「こども・若者の意識と生活に関する調査」(2023年公表)では、40〜64歳のひきこもり相当者は回答者の2.02%、15〜39歳では2.05%という結果になり、全国では合わせて約146万人と推計されています。

また、全国ひきこもり家族会連合会の調査によれば、ひきこもり状態にある人のうち40歳以上が占める割合は、2010年の約10%から2021年には30%を超えるまで増加しています。長期化・高年齢化が進んでいることがうかがえます。

「8050問題」と企業の関係

中高年のひきこもりが長期化すると生じるのが、いわゆる「8050問題」です。80代の親が50代のひきこもりの子どもの生活を支え続け、親自身が要介護状態になっても子どもに頼れず、経済的・精神的な負担が親子双方にのしかかる状態を指します。

この問題は、企業にとって二つの形で関わってきます。

一つは、従業員自身が対象になりうるという点です。 ひきこもりのきっかけとして最も多いのが「退職」であることからも分かるように、職場とのつながりを失った瞬間に社会的孤立のリスクは高まります。休職者や退職予定者へのフォローが薄い企業ほど、このリスクは大きくなります。

もう一つは、現役の従業員が「支える側」になるケースです。 8050問題の当事者家族の中には、就労している兄弟姉妹や親族が経済的・精神的な支援を担っているケースも少なくありません。介護と仕事の両立と同様に、家族のひきこもりを抱える従業員が、誰にも相談できないまま生産性の低下や離職に至ってしまう可能性があります。

健康経営の視点でできる対策

1. 社内のつながりを意識的につくる

孤立の予防には、日常的な人間関係の希薄化を防ぐことが重要です。

定期的な1on1や部署を越えた交流の機会など、「話せる相手がいる」状態を仕組みとして用意することが、休職者・退職者の孤立防止にもつながります。

2. 相談窓口・EAPの整備と周知

メンタルヘルスや家族の問題を含め、従業員が安心して相談できる窓口(EAP:従業員支援プログラムなど)を用意し、存在を周知することが第一歩です。健康経営優良法人の認定基準でも、メンタルヘルス対策への取り組みは評価項目の一つになっています。

3. 介護と仕事の両立支援制度の活用

経済産業省は「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」を公表しており、家族構成や家庭の状況を定期面談で把握すること、柔軟な勤務時間設定などを推奨しています。8050問題を含む家族のケアは、介護と仕事の両立支援の枠組みの中で対応できる部分もあります。

4. 退職前後のフォロー・セカンドキャリア支援

退職がひきこもりの最大のきっかけであることを踏まえると、定年や早期退職の前後に、次の居場所や役割につながる支援(再雇用、地域活動やセカンドキャリアの情報提供など)を行うことも、予防的な健康経営施策の一つといえます。

まとめ

中高年のひきこもりは、当事者本人だけでなく、その家族として働く従業員にも影響しうる問題です。健康経営に「孤立を防ぐ」という視点を組み込むことは、従業員本人の離職予防だけでなく、8050問題を抱える従業員の介護離職防止にもつながります。

健康経営ラボでは、メンタルヘルス対策や介護と仕事の両立支援を含めた健康経営の設計についてもご相談を承っています。まずは自社にどんなリスクがありそうか整理したいという段階でも、お気軽にお問い合わせください。

よくある質問

Q. 中高年のひきこもりは、なぜ最近増えているのですか?

A. 内閣府の調査では「退職」が最も多いきっかけとされており、人間関係の問題や病気、コロナ禍による生活の変化なども要因として挙げられています。長期化・高年齢化が進んでいることも指摘されています。

Q. 8050問題は企業にどんな影響がありますか?

A. 従業員本人が退職後に孤立するリスクに加え、家族にひきこもり状態の人がいる従業員が、介護や生活支援の負担を一人で抱え、相談できないまま生産性低下や離職に至る可能性があります。

Q. 健康経営優良法人の認定基準とも関係がありますか?

A. 直接的な必須項目ではありませんが、メンタルヘルス対策や従業員の家族状況の把握は、健康経営優良法人の評価項目とも重なる部分があります。

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